函館にもようやく春らしい日差しが感じられるようになり,五稜郭内で遊ぶ子どもたち,散歩する市民や観光で訪れた方々の明るい声が響くようになってきました。
箱館奉行所では,本日,冬季間設置していた玄関・内玄関の風除ネットを取り外し,奉行所らしい景色をご覧いただけるようになりました。
そこで,多くのお客様に箱館奉行所を知っていただけるよう,本日から,奉行所の見所をシリーズで紹介させていただきます。
第1回目は,箱館奉行所復元への歩みです。
箱館奉行所は,幕末の箱館開港による諸外国との応接,蝦夷地の防備,蝦夷地開拓などの役割を担うために置かれた江戸幕府の役所です。
1864(元治元)年,その防御のために造られた五稜郭と箱館奉行所庁舎がほぼ完成し,箱館山麓の奉行所から移転しましたが,大政奉還により1868(慶応4)年明治新政府に引き継がれ,同年旧幕府脱走軍が占拠して箱館戦争の舞台になりました。
この戦いは翌年終結しましたが,しばらくして箱館奉行所はその大部分が解体されてしまいました。
函館市では,本来の姿を取り戻すため,文化庁の史跡整備計画事業に基づいて復元を計画し,発掘調査,古写真,絵図面,文献資料などの詳細な分析を基に,宮大工や瓦・左官など全国から集まった職人の手で,2010年,140年の時を超えて往事の場所に蘇りました。
復元工事は4年かけて行われ,この度復元された奉行所がすっぽり入る巾36m,奥行き55m,高さ20mの骨組みに素屋根をかけた建物の内部で作業が進められました。(写真1)
五稜郭跡は,国の特別史跡であることから残された遺跡をしっかり保護したうえでの復元が必要であり,地面を掘らずに基礎を造り鉄骨を立てるなど,特別の工夫も必要になったそうです。(写真2)
復元工事は順調に進み,本来の奉行所の3分の1の規模ではありますが,昔の奉行所が完成した当時の姿を思い起こさせる,木造古建築の見事な建物が姿を見せてくれました。(写真3~8)