箱館奉行所の大広間を紹介します。(四之間から見た大広間写真)
大広間は,お正月等年中行事のときに使用された最も格上の部屋であったといわれます。奥に見える壹之間(18畳),弐之間(18畳),参之間(21畳),四之間(15畳)合わせて72畳の広さがあり,箱館奉行を中心に,身分により入ることのできる部屋が決まっていたようです。
四之間には,伝承の技術を持つ職人が短いい草を重ねて織り上げた中継表が使われており(中継表写真),大広間の他の部屋も,五段配(ごだんばえ)といわれる5層のわら床に最高級の備後表を使用して仕上げています。なかでも壹之間は,昔のままの雰囲気をめざし,職人歴45年の職人さんが一日一畳半ずつ縫い上げて完成させた本畳です。
大広間などの長押(なげし)には,黒い色の釘隠しが飾られています。長押は柱に釘で打ち付けるため,釘の頭を目立たなくすることも付ける目的のようです。
箱館奉行所では,部屋などの格により「葵六葉」,「六葉」,「花菱」といわれる3種類の釘隠が使われており(釘隠写真),残念ながら,箱館奉行所の復元のための発掘調査で釘隠を確認できなかったため,この度の復元では,佐渡奉行所の古写真に残る釘隠の意匠を基に専門の職人が銅版を打ち出し,煮黒目(にぐろみ)仕上げで再現したそうです。
書院造りの大広間壹之間には,床,床脇,付書院を見ることができます。(壹之間写真)
向かって左側の床脇には天袋や違い棚がありますが,天袋底板,違い棚,床板などは,ケヤキ材の無垢(むく)の一枚板を使用し,京都の職人さんが木地蝋色仕上げという漆塗りで完成させたものです。床の框(かまち)もケヤキ材を黒蝋色仕上げにし,付け書院の地板は拭き漆という工法で仕上げるなど,漆塗り一つ一つにまで日本文化の伝統や趣の深さが感じられます。